ニューヨークに引っ越す前はまさか自分のアパートで火事が起こるとは想像していなかったが
引っ越して一年目になんと火事が起きたのである
それは前に話したことのあるあの危険な地域のブルックリンの家であった
ある日私は学校終わりに携帯を見るとルームメートから不在着信が何通もあったので急いで電話をかけたなおした
ルームメート「火事で今家が燃えてる!もう何をしていいかわからない!」
と叫びながら、電話の裏で泣いているのが聞こえた
とりあえずルームメートは安全みたいだからよかった
私はすぐに家に向かったが、1時間くらい家から離れた場所にいたため
帰る途中すごく不安だった
今まで幸い火事が起きたことがなかったので、実際おきてみると何をしていいかわからなかった
家に着いたら火はおさまっていたが
煙がぷんぷんしていて、窓ガラスは全て消防士によって壊されていた
一時はすごい火の暴れようだったらしい
ルームメイトは煙の立つアパートを見ながら泣いていた
彼女は昼寝をしていたところに煙の匂いを感じて起きて消防署にすぐに連絡し、周りの家のドアをノックして皆に家を逃げるように呼びかけたスーパーヒーローだったのだ
彼女のおかげもあってアパートの住民は全員怪我をすることなく非難ができた
それゆえに大変怖い思いをした彼女が泣くのは理解できた
しかし彼女を慰めながら私はこの危ない地域から出来る限り早く引っ越したいと思っていたので
引っ越せることに対して嬉しい気持ちの方が強く、家が焼けても全く悲しくなかった
この家に住んだのは約5ヶ月
私は全くこの家に対して思入れがなかった
銃事件に加え他にも問題が多かったのだ
まずガスが引っ越してから一度もついたことがなかった
何度もガス会社に電話したが、いっこうにガスはつかず
2ヶ月ほど前に電気ガスコンロを一つを渡されたきりだった
シャワーもたまにお湯が出ない時があった
加えてルームメートは私とは真逆の夜型の生活をしていて
夜中の2時にリビングでワイワイと友達と騒ぐことがよくあった
ルームメートにこの事を話したが、しばらくするとまた夜中に騒ぎ出し
次の日朝早く起きなければならない日に耳栓を使ってなんとか眠ろうとしていた日々は辛かった
この火事がなければ私たちは一年ここに住むという契約をしていたので
後7ヶ月もここで暮らさなければならなかった
と思うと、不謹慎ながらも私は火事が起きたことに対して感謝の気持ちが芽生え始めていた
煙がおさまった頃、私たちの家は完全に閉鎖され連絡が来るまで待機するしかなかった
火事の原因は地下にあるガスタンクが漏れた事だった
その日の晩から私たちは友達の家に数日間お世話になる事になった
数日後、私たちは家に必要なものを取りに戻る事を1時間だけ許された
家に戻ると部屋は灰だらけで煙の匂いもすごかった
私の窓際のベッドの上には窓ガラスの破片が飛び散っていた
窓際に置いていたわたしの青色の英語の文法の教科書は変色して薄い青色に変わっていた
床に置いていたものは水浸しになって台無しになったものもあった
肝心なパスポートとパソコンには問題がなかったので私はほっとしていたのだが
私のルームメートは激しく泣き出した
彼女はものが多くてたくさんのものが台無しになってしまったのだった
私たちは1時間で全ての荷物をまとめてこの家から立ち退く必要があったので
複雑な思いがある中でせっせと荷物をまとめた
そして私たちはこの家から永遠とおさらばした
この時私はものに執着心を持たない生き方をしようと決意した
人生本当に何が起こるかわからないと実感し
ものはこのように儚く失われることがある
火事のみならず地震や台風、様々な自然災害はこれからも起こるものだ
だから私が人生で大切にしたいものはモノではなくて
大切にしたいのは人間関係と経験だと19歳だった私は悟った
今思うとこの経験が私がミニマリズムという考えに強く惹かれた理由の一つではないかと思う
本当に大切なモノだったら常に身につけておくのが一番安全だろうが、それでも壊れたりなくしたりまたは盗まれるかもしれない
モノに保証を付ける事は出来るけど、一回壊れたり失われたら、全く同じモノではなくなるかもしれない
だからモノに思い入れがあるのはいい事だけれど
これからもいろいろなモノと出会い、それらを自分の手に入れる中で
私は手放す事を恐れずに、そのモノを通じて自分が感じた気持ちや経験を一番大切にしていきたい